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第39話 施設に残る匂い

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-07-17 06:00:22
 私はページをめくった。

 担当者印が一つ、他の欄より一瞬薄い。日付の数字も、上からなぞったように濃さが違う。

「この欄、変です」

 征臣が隣から覗き込む。近い。肩が触れるほどではないのに、シャツの洗剤の匂いが台帳の薬品臭をわずかながら薄めた。

「担当者印と日付が合っていない」

「印の方が古いです。日付だけ、後で書き直しているように見えます」

 私の声は落ち着いていた。

 台帳の余白に、薬剤名らしき文字が残っている。途中で消されていたが、完全には消えていない。

 視界の端で、征臣が一度だけ拳を握った。

「母の死亡診断書を」

 診断書を机へ置く前に、私は撮影時刻と資料番号を確認した。紙の匂いに記憶を引かれても、順番だけは崩したくなかった。

 言い終える前に、彼は封筒を差し出した。

 私はその早さに、かすかに笑いそうになった。こういう時だけ、恐ろしく有能だ。

 封筒から診断書の写しを取り出す。

 余白に残った文字が、台帳の消し跡と重なった。

 診断書の余白に残っていた薬剤名は、完全な文字ではなかった。

 けれど、台帳の消し跡と合わせると読めてしまう。読めてし
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